■
純
愛
ド
ロ
シ
ー
別に、今すぐじゃなくていいんだ。
将来的に俺の手におさまればそれでいい。
そう、思ってたけど
そんな余裕はもうすっかりないんだ。
寧ろ、
限界
゚
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+
°
遥の事が好きかといえば、好きだ。
もちろん、恋愛対象として愛している。
だけど、今すぐに手に入れたいかと聞かれると
それとはまた別問題だ。
全くとはいわないが、実はあまり考えた事がない。
それなりに今の関係にも満足している。
だから、俺にはこの関係を壊してまで彼女を手に入れる勇気がない。
というのが、便宜上の理由で、
実の所、遥には好きなやつが居る。
無論、俺じゃない。その名も『亮ちゃん』
『亮ちゃん』というのは、遥の幼馴染みだ。
直接、俺に教えてくれた訳ではないが、
なんというか、遥は恋愛に器用なやつではない。
俺も人の事を言える様なもんじゃないが、
なんとなく、勘づいてはいた。
亮に向ける目と俺に向ける目の違いを
だから、万が一の奇跡を考慮したとしても
俺と彼女が付き会える可能性は限りなく0%に近い。
だから、本当の問題はリスクを侵す云々ではなくてここにあった。
俺は、臆病なんだ。
゚
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°
゚
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揺れて、
揺れて、
揺れる。
ギー
ギー…
月が満ち始めた頃だった。
その日、俺は姉貴のパシリで
アイスを買いに行かされた帰りだった。
「…くそ姉貴。」
ぼそッと愚痴をこぼしながらも、
俺はちゃんとアイスが入った袋を片手に夜道を歩いてた
夜風が火照った体を冷やしてくれて
心地良かった。
また、辺は静かで、
妙に落ち着いた。
静かな空間は妙に落ち着くから、
昔から好きだった
。
ただ、耳を澄ませると微かに何か軋む音が聞こえた。
ギー
ギー
規則的で断続的。
足を進めて行くに連れて、
その音も、大きくなって
ついに、公園に差し掛かった頃には
もう、その音の発信源にも有る程度予想が立っていた。
ブランコ
ただ、1つ予想外だったのは、
それに乗って揺れていたのが遙だった、ということだ。
俺は、公園に入りブランコの方へ歩調を早めた。
しかし、遙は俺が近寄ってもすこしも気づかない様で、
ひたすら自分の足下の一点のみばかり見つめ続けている。
俺は遙に声をかけようか否や迷ったが、
結局、話かけずに帰る事は出来なかった。
あんな辛そうな顔をした彼女を見てほっておけるはずがない
。
しかし、投げかける言葉が見つからず俺はその場で二の足を踏む状態となった。
こんな時に投げかける言葉の一つも浮かばない自分にもどかしさを感じる。
そんな時、ふと声がした。
「司君…?」
遙だった。
遙がぽつりと呟いた。
まるでどこかから空気が抜けているのかと思うような儚げな声だった。
「こんな時間にどうしたの?」
「…どうしたのはお前の方だろ。」
俺は、遙が座るブランコの横まで近寄った。
泣きはらしたのだろう、遙の目は赤く晴れていた。
「…えへへ、やっぱりわかった?
司君は鈍感だから誤魔化せるかと思ったのに。」
遙は今にも溢れ出しそうな涙を堪え、俺に微笑んでみせた。
しかし、その顔は俺には苦痛に満ちた表情に見え、あまりにも痛々しかった。
「無理して笑うなよ、俺の前でそんなのはいらないから。」
その瞬間、プツンと糸が切れたかの様に遙の目から涙が溢れ落ちた。
それは、止む事を知らぬ様に幾重にも止めどなく流れてく。
俺は、思わずそんな遙を抱きしめた。
震える肩が
赤い目が
すべてが愛おしく思えた。
しばらく遙は俺の胸で泣き続けたが、
それから、嗚咽混じりに言葉を紡ぎだした。
「私ね、亮ちゃんの事が好きだったの。」
遙が俺の胸の中で呟く。
「知ってた。」
「…司君には何でもお見通しだね。」
遙は少し照れくさそうに顔を埋めた。
「亮ちゃんね、今日彼女ができたんだって…
わざわざ私に紹介しにきてくれたよ…。
亮ちゃん凄い幸せそうな顔して私に言うの。
だから、お祝いしてあげなきゃと思って一生懸命笑って「おめでとう」って言ったの…でも…
私、うまく笑えてたかなぁ…?」
遙が俺のシャツを握る手の力が更に強くなった。
震える肩。
俺は遙をいっそう強く抱きしめた。
「お前は十分頑張ったから。」
また、嗚咽混じりに呟く。
「私、亮ちゃんの事が好きだったの。」
「だから…知ってた。」
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